Japan 2022

Summit sessions

セッションの紹介

ビジョンゼロ・サミット・ジャパン2022は、16のセッションがあり150名を超す労働安全衛生および協調安全技術などに関する世界的に著名な専門家、グローバル企業のリーダーたちが登壇し、ニューノーマルにおいての安全・健康・ウェルビーイングを再定義するために必要な幅広い革新的な情報と解決策を提言します。
ここでは、各セッションチェアーがそれぞれの概要について紹介します。

1日目

Hans-Horst Konkolewsky

Denmark

International ORP Foundation (FIORP)
President

企業におけるビジョン・ゼロの実施  =ビジョンからリアリティへ=

安全・健康と持続可能性がグローバルビジネス社会において最優先事項となっているのは、ISSAのビジョンゼロキャンペーン参画企業の圧倒的な関心の盛り上がりからも明白です。ビジネスの成功は、企業にとって最も需要な資産である働く人に依る部分がかつてないほど大きくなっており、安全・健康・ウェルビーイングは、ますます企業文化の総合的な部分を担うようになってきています。本セッションでは労働安全衛生の専門家から、実際に企業がビジョンゼロ導入の過程(the Vision Zero Journey)で得た貴重な見識や実用的な経験を共有していただけます。特に注目すべきは、予防文化の構築におけるリーダーシップと、すべての従業員の積極的な関与が果たす重要な役割についてです。また、あらゆる企業の活動や場所においてもビジョンゼロという考え方をいかに推進し、発展させるか、さらに、サプライヤー、提携・下請け会社や関係する顧客を含む全てのビジネスパートナーに広められるかについて検証します。最終的には、デジタル化の拡大により劇的に変わる労働環境において、考えられるリスクや、職場の安全・健康・ウェルビーイング、そしてビジョンゼロ推進の機会について議論し、実用的な解決策へと導きます。

Ockert Dupper

South Africa

International Labour Organization (ILO)
VZF Global Programme Manager

グローバルなサプライチェーンをより安全に

毎朝、世界のどこかで1,000人もの人が仕事に出かけたまま帰宅しません。さらに、別の6,500人が労働作業に起因するリスクにより発症した病気で日々亡くなっています。彼らは、私たちの洋服を作っている人であり、私たちが飲むコーヒーの原料であるコーヒー豆を育てている人であり、そして、私たちの住宅や企業の建屋を建設している人達です。彼らには安全で健康的な職場が必要であり、激変するグローバルサプライチェーンにおいての安全衛生改善という、我々の共有コミットメントの対象となる人々です。 G7が提唱し、ILOが運営するビジョンゼロファンド(VZF)は、政府、雇用者、労働者、その他のステークホルダーを動員して、最も必要とされる場所で、労働者の健康と安全を実際に測定可能な形で改善します。ビジョンゼロファンドは、工場や現場更には政府やグローバル企業の分野まで、あらゆるサプライチェーンのレベルにおいて、積極的な変化をもたらす部門や地域を戦略的なターゲットとします。本セッションでは、世界のサプライチェーンをより安全なものにするためのビジョンゼロ基金の取り組みをご紹介し、優れた事例や成果を紹介するとともに、多国籍企業や労働安全衛生(OSH)実務者を含むすべてのステークホルダーが一丸となって取り組まなければならない固有の課題も明らかにします。セッションの第2部では、ビジョンゼロファンドから「イノベーション・チャレンジ」の発表が行われます。このイノベーション・チャレンジは、サプライチェーンで働く人々の安全と健康を確保するために有効なソリューションを紹介し、普及させることを目的としています。セッションでは2組の受賞チームにより発表が行われ、選考委員会のメンバーも参加します。

谷川民生

Japan

国立研究開発法人産業技術総合研究所
Deputy Director, Research Center Team Leader

モビリティ・自動車・無人搬送車(AGV)

AI技術の進歩により、自動運転への期待が増してきております。顔認証技術は自動車の自動運転に使用されるだけでなく、工場においてのAGVにも活用されています。その結果、自動モバイルロボットがあらゆる分野で進歩することが期待されています。このセッションでは、自動運転を含めて労働者とともに共存する空間で、モバイルロボットをより安全に動かすための技術や応用を紹介し、求められる安全技術の方向性を確認したいと考えています。

河田孝志

Japan

清水建設株式会社
Advisor

建設業における労働安全衛生(OSH)と生産性の向上

企業において、生産性向上、コスト低減、高品質の建物を提供することはとても重要なことです。しかしながら、低コストで、迅速さを維持しつつ、安全を確保し建設するには、大変な努力が必要です。安全確保のために納期を遅らせ、お客様にご不便をおかけすることはできません。よって、安全性と生産性の両方を一度に実現させる必要があります。そのため、我々建築業者は安全性と生産性の向上が同時に実現可能な方策を導入しています。このセッションでは企業において、生産性向上と安全性向上の同時実現についてのディスカッションを行います。このディスカッションを通じて、SDGsの促進、ウェルビーイング実現に貢献する意識を促進することを目指します。

Rene Leblanc

Canada

International Occupational Hygiene Association (IOHA)
IOHA Past-President 2020

感染症対策の経験から学んだ健康・衛生の在り方

COVID-19 (SARS-CoV-2) により、世界は100年来の脅威的なパンデミックに見舞われています。多くの国が色々な取り組みを行ないながら過去に経験したことのないパンデミックに向き合っています。各国で実施されたもっとも良い例、そして改善が求められる経験や体験などから学び、議論する機会とします。ILOの推定によると、パンデミック前では約280万人もの労働者が仕事で命を落とし、そのほとんどが非伝染性の病気(石綿病、珪肺、肺がんなど)が原因とされています。COVID-19から得た経験や学んだ教訓は労働者だけでなく、人を危険から守り続けるために生かされなければなりません。このセッションでは仕事や生活習慣、文化的背景、環境において働く人を守るためのより良い方法について議論します。

2日目

Alan Stevens

United Kingdom

Institution of Occupational Safety and Health (IOSH)
Head of Strategic Engagement

未来のビジネスリーダー   =より健全なパフォーマンスと生産性=

COVID-19パンデミックへの対応、職場の人口構成、技術や仕事の進め方など様々な変化に伴い、企業には持続可能で責任あるビジネス運営がますます求められており、世界の潮流として新しい仕事の世界が形成されつつあります。今や管理職やリーダーはどのような結果が得られたかに留まらず、どのようにしてその結果が得られたのかについても重要視しなければなりません。その核となる部分が優れた労働安全衛生(OSH)マネジメントの実践であり全ての管理職やリーダーが責任の一翼を担うべきと考えられています。持続可能な優良企業は例外なく、従業員の安全と心身の健康、ウェルビーイングに投資をしています。災害を予防し、利益を生むような目標を計画し追求をしています。管理職やリーダーは単なる法令遵守を超えて、従業員のウェルビーイングがいかに評判や競争上の優位性をもたらすかを理解しなければなりません。彼らは外に目を向け、事業を展開する地域社会を大切にしなければなりません。また、環境や社会への影響を軽減するように努め、すべての行動において社会的利益の原則を考慮する必要があります。このような企業は、成長や改善のための手段を積極的見つけることができ、長期的に積極的な変革を計画する管理職やリーダーを求めています。このようなリーダーやマネージャーは、レジリエンスの高い組織を構築し、高い評価を得て、より多くのビジネスを獲得することができます。このような企業は、優秀な人材の採用と維持が容易で、顧客との関係も良好になり、地域社会からも支持されるようになります。つまり、優れた企業はマネジメントやリーダーシップの枠組みの中心に労働安全衛生(OSH)を取り入れることで、より成功するのです。このセッションでは、職場で優れたOSHパフォーマンスを発揮するために必要なコア・コンピテンシーについて議論し、優れたOSHリーダーシップ、マネジメントの実践が企業DNAを通じて、どのように推進されているか紹介します。

Bernd Treichel

Switzerland

International Social Security Association (ISSA)
Senior Technical Specialist in Prevention and Social Security

前向き先行指標(Proactive Leading Indicator: PLI)の活用がビジョンゼロを推進する

前向き先行指標(PLI)は国際社会保障協会(ISSA)が、ビジョンゼロに取り組む企業や団体が、その取り組みレベル、規模の大小、国際展開の有無にかかわらず活用して頂けるようにした無料提供ツールです。前向き先行指標(PLI)は、組織内部の安全・健康・ウェルビーイング向上のみならず、サプライチェーンのような社外パートナーでも用いることが可能です。また、他社とのベンチマークの為に使用するなど多様な目的で利用できます。PLIはビジョンゼロを推進し実践する組織、科学文献、国家機関、産業界などから提供される情報源や根拠、並びにプロジェクトチームや専門家や運営委員会の持つ専門知識や経験をもとに作成されました。このセッションでは、この指標の科学的根拠を示し、実用的な解決策の提供や応用例、また、企業による成果をご紹介します。

北條 理恵子

Japan

独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
Senior Researcher, associate professor

ヒューマンファクターを考える-安全で安心な福祉社会の実現に向けて

このセッションでは人間の行動原理の原則の概要と、行動分析を用いた実験の数例をご紹介します。行動分析においては、人はシステムの一部と考えられています。さらに、人の行動を管理、予測、量的評価することで、生産効率や安全行動を最適化する例を紹介します。機械安全リスク低減策における行動分析技術の使い道についてディスカッションを行います。将来、事故の予防、安全の確保だけではなく、罰則ではなく報酬のようなポジティブなサイクルによって、幸福や福祉が向上するよう社会システムを変えていく事が必要になります。行動分析はシステムを構築するうえで効果あるのです。

中坊 嘉宏

Japan

国立研究開発法人産業技術総合研究所
Senior Researcher

ロボット工学と協調安全

近年のIoTデバイスの進歩は、人と機械の協業や、安全のための協働を可能にしています。

製造業に限らず、様々な労働環境において、人、ロボット、あるいは多様な機械が、

時間と空間を共有して活動する際の、安全技術、慣習、標準化に関する報告を集め、課題について議論します。

清水 尚憲

Japan

独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
Supervising researcher

製造業における現場での安全衛生活動

このセッションでは、さまざまな国の職場におけるVision Zero活動と安全衛生活動(ゼロ災キャンペーン)の例をご紹介します。製造現場においての労働災害、労働疾患、そして、リスク要因の削減、そしてゼロにすることが目的です。Vision Zeroは、あらゆる災害、疾患、傷害が予防可能であり、安全・健康・幸福であることは基本的な価値であるという考えを共有する企業や団体を巻き込んだグローバルなキャンペーンです。現在、1万以上もの企業や団体がこのキャンペーンに参画しており、その数は毎年増加しています。このセッションを通じて、労働におけるゼロ災を達成するための国際的なネットワークの構築を目指します。

武田 貞生

Japan

セーフティグローバル推進機構(IGSAP)
Director

ウェルビーイングとSDGs

ウェルビーイングはビジョンゼロによる労働安全衛生(OSH)の活動において新しく取り入れられた考え方です。世界的な新たな潮流として、多くの企業や団体がウェルビーイングをマネジメントにおける一つの重点目標として捉えるようになっています。ビジョンゼロはこのトレンドを支持することにより、充実した労働生活と事業の持続的発展をもたらし、SDGsの達成に貢献します。SDGsは現在、そして未来のビジネスや社会にとって、なくてはならない指標です。

このセッションでは、世界中の学術界、ビジネス界のオピニオンリーダーが次のテーマでディスカッションを行います。

(1) ウェルビーイングの概念と役割
(2) 企業経営におけるウェルビーイングと組織的アプローチ
(3) OSHにおける環境変化とウェルビーイングの重要性の高まり
(4)ウェルビーイングとイノベーション、国際標準化
(5)SDGsのとらえ方と組織によるSDGsマネジメント, ESGマネジメント

3日目

Dr. Tommi Alanko

Finland

Finnish Institute of Occupational Health (FIOH)
Director of Occupational Safety Unit

より高度な教育、オンライン学習、資格認定を通じた労働安全衛生(OSH)能力の向上

ビジョンゼロは安全・健康・ウェルビーイングの世界的な推進を目指します。「学び」はビジョンゼロの実現においてキーとなります。このセッションでは、 労働安全衛生(OSH)に対する意識を高め、且つ専門知識を強化する為のツールを提供し、キャンペーンやトレーニングプログラム、活動を紹介し、OSH力構築の多様な側面に焦点をあてます。また、トレーニングの機会だけではなく、現在、そして将来の課題についても触れます。教育や仕事の現場でOSHを学び、トレーニングするには、どのような方法が効果的であり、有意義な学びにつながるのか?何がどのような理由で役に立つのか?このセッションは経験を共有する場とし、従来の手法から革新的な手段、さらにはeラーニングやバーチャル・リアリティを使ったトレーニングの組み立て方や実施方法など、デジタルトレーニングもご紹介させていただきます。また、世界的なパンデミックが世界中の高等教育やOSHトレーニングにどのような影響を与えたのか、そしてその経験から得た学びは将来にどのような影響を与えるのかについても議論します。

梶屋俊幸

Japan

国際電気標準会議(IEC)
Vice-chair of IECEE Certification Management Committee of IEC

安全、健康とウェルビーイングための国際標準化

ICT、AIやロボット工学が急速に発達する現在、新しいテクノロジーが、いままで不可能であったOSHの新しい手法を可能にております。未来のOSHはどのようなものか、またどうのようであるべきかが、IEC MSB白書「将来の安全」(2020年11月発行)で示されてきました。そしてISOは、人と協働するロボットが労働者の安全を維持しながら、どのように機能すべきかにも取り組んできました。このセッションではテクノロジーが適合性評価基準のような国際標準と共に、どのように発展していくべきかを取り上げます。

妹尾 義樹

Japan

国立研究開発法人産業技術総合研究所
Director, Information Standardization Office

AI・ICT とデジタル化

人工知能(AI)は近い将来のあらゆるビジネスにおける、改革において鍵となるものと考えられています。しかしながら、AIの構成要素を含むソリューションをどのように管理するかを知る人はいなく、AIソフトウェアの品質マネジメント技術はまだまだ確立されていません。このセッションでは、AIの質の管理の難しさと、いかに我々が問題を乗り越えるかについて話し合います。特に、AIの品質マネジメントとVision Zeroのコンセプトとの関係性に焦点を当てます。(人と協調労働するAI組み込みロボットについて)

Magdalena Wachnicka-Witzke

Poland

Agricultural Social Insurance Fund (KRUS)
Director of the Communication and International Cooperation Office

アグリカルチャー(農業)における労働安全衛生(OSH)文化の構築

農業分野は作業中における、致命的な事故や負傷の割合が最も高い産業の一つです。安全・健康・ウェルビーイングという3つの側面で労働災害の予防に取り組むビジョンゼロのコンセプトは、農業においてOSHカルチャーを作り上げる為に、どのようにして予防システムを構築するかを提案しています。農業従事者は数多くの様々な危険やリスクにさらされています。このような状況がOSHカルチャーの構築を重要とし、且つチャレンジングなテーマになっています。このセッションでは、現在、農業従事者が作業中に直面している労働災害の実情と、彼らの安全・健康・ウェルビーイングを維持していくための解決策をご紹介します。
セッションは次の3つのトピックで構成されています。

  1. 環境問題と課題
  2. 近代技術とAIの活用
  3. ストレスによる耐えがたい負荷 ーメンタルヘルスとウェルビーイング

Dr. Mohammed Azman Aziz Mohammed

Malaysia

Social Security Organization of Malaysia
CEO / Director General

国家戦略としてのビジョンゼロの推進

労働における全ての事故、病気や怪我は予防できるというビジョンゼロの考え方は、政府や社会保障機関を含む多数の企業やパートナー団体によって共有されており、現在も増え続けております。国家レベルでビジョンゼロを推進する彼らの積極的な活動はビジョンゼロの考え方に基づいた予防文化の発展を支援するという、グローバルキャンペーンの目的達成にとって非常に重要な役割を果たします。

このセッションでは、関係省庁、労災補償制度や社会保障団体の上級代表者が、各国におけるビジョンゼロ戦略やプログラムを紹介し、自国でのビジョンゼロ推進に成功した貴重な経験を発表します。ゼロ災に焦点を当てたり、ビジョンゼロをより幅広い予防キャンペーンの一部分として統合したり、ビジョンゼロ推進に特化した新しい国家予防戦略を策定したり、それぞれ国の事情を反映した様々な形式を紹介します。